テーマ : 新聞一面掲載記事

大自在(2月26日)宇宙開発の進展

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が、1度は失敗した国産新型ロケット「H3」の打ち上げに成功したと思ったら、今度は米国の民間企業の着陸船が月面に着陸した。民間企業で初だという。
 先月には、JAXAの探査機「S[ス]LI[リ]M[ム]」が初めて月面に着陸。どの事業の成功も科学の発展にとって喜ばしいことだが、最近の宇宙開発の進展はなんだかめまぐるしい。
 かつては米国と旧ソ連が宇宙開発にしのぎを削った。今は主役が国家から民間へと移りつつあるという。宇宙産業の市場規模は現状でも数十兆円、2040年には100兆円規模、試算によっては数百兆円にも膨らむとされる。民間参入が相次ぐのも無理からぬことだ。
 産業の裾野は広く、H3には県内企業の部品が使われていた。従業員数十人規模の企業の技術が宇宙開発に役立てられるというのは夢がある。今後も県内でそうした企業が増えてほしい。
 ただ、無限に広がっていると思われがちな宇宙でも、既に開発に伴う悪影響が懸念されている。例えば多数の小型衛星を連携させる「衛星コンステレーション」の登場などで、従来とは比べものにならない数の人工衛星が地球の周りを回るようになり、運用を終えた衛星やその部品、爆発で生じた破片などのスペースデブリ(宇宙ごみ)も増えて人工衛星と衝突する危険性が高まるとされる。人工衛星の光や電波で天文観測に支障が出る「光害[ひかりがい]」も指摘されている。
 今のうちから開発の負の面にも目を向け、ルールづくりや対策の開発を並行して進める必要がありそうだ。

いい茶0

新聞一面掲載記事の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞