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大自在(4月20日)静岡県セイブ自動車学校

 浜名湖畔にユニークな自動車教習所がある。外国人の運転免許取得支援に力を注ぐ「県セイブ自動車学校」(浜松市中央区)。国内の教習所で初めてポルトガル語での講習を始めた。日系ブラジル人を指導員や事務員として積極雇用する。
 プロ野球巨人の元投手水野雄仁さんが出演するテレビCMでも知られる。「おじさん」の一言が印象深い。CMはこれまで何度もリニューアルされた。近々「おばさん」編が始まるそうだ。
 社長の早川和幸さん(72)は今春、法政大大学院政策創造研究科で博士号を取得した。研究対象は中小企業の日系ブラジル人の就労状況や雇用意識。社長業の合間を縫い、勉学や調査に励んだ。
 日本語、英語の査読論文の学会誌掲載など「博士号」の壁は高い。挫折しそうになったこともあるという。高齢の大学院生は珍しく、周囲に注目された。「期待に応えなければ」との思いで踏ん張った。苦節5年。博士論文の審査を経て、悲願を達成した。
 高校は定時制で弁当製造会社などに勤務し、大学時代は新聞配達をしながら学んだ。大学院の修士課程に進んだのは65歳の時。「義務感で学校に行っていた若い頃とは違う。自らの意思でやっているので達成感がある」と語る。
 中高年の学び直し「リスキリング」がブームだ。国も支援策を打ち出している。ただ、学習対象はITなどの成長分野に偏りがち。新たな能力を身に付け、仕事で稼ぎ続けるためという側面が強い。「習うは一生」。いくつになっても自らの興味、関心の赴くまま、学ぶ喜びをかみしめたい。

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