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大自在(3月17日)ロシア大統領選

 米国の原爆開発を主導した物理学者の半生を題材にした映画「オッペンハイマー」が、7部門で受賞したことしの米アカデミー賞。日本も宮崎駿監督のアニメ「君たちはどう生きるか」と「ゴジラ―1・0(マイナスワン)」のダブル受賞に沸いた。
 同賞の歴史をさかのぼると、日本映画初の受賞作品となったのは黒沢明監督の「羅生門」。1952年の名誉賞(現在の国際長編映画賞)だった。日本は同年4月まで連合国軍の占領下にあった。敗戦国の日本でも芸術性の高い作品が作られていることを世界に知らしめた。
 この年に生まれた一人の政治家が今、大統領選に臨んでいる。通算5期目を狙うロシアのプーチン氏。15日に始まった投票は3日間かけて行われる。
 もっとも、結果は分かりきっているとの見方がもっぱらだ。直近の世論調査で、支持率は8割。反体制派を弾圧し、厳しい情報統制を敷く中での“圧勝”は茶番と言うほかない。
 ウクライナへの軍事侵攻が想定外に長期化している。独裁的な政治家が国民の厚い支持を演出したくなるのは無理からぬことだ。ただ、獄中で不審な死を遂げた反体制派指導者ナワリヌイ氏の葬儀には、物言えぬ国民の長い列ができた。いつも自信に満ちあふれているように見えるプーチン氏の心底はどうか。
 被爆地の悲惨さを表現していないなどの批判もある「オッペンハイマー」だが、核兵器開発の正当性を巡る科学者の苦悩を描いている。ウクライナでの核兵器使用をちらつかせて他国を恫喝[どうかつ]する独裁者は、ぜひとも観賞して学ぶべきだろう。

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