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静岡市、九州大と連携 市民データ活用で健康施策立案へ 疾患傾向と生活習慣解析

 静岡市は九州大と連携し、保有する市民の基本情報や健康関連データを活用した施策立案に乗り出す。居住地域やワクチン接種歴などの個人情報を匿名化した上で、同大に提供し、同大は長期的な追跡評価を通して静岡市民の疾患の傾向や原因となる生活習慣などを解析する。市は得られた知見を市民の健康増進の取り組みに反映させる。26日までの市への取材で分かった。

静岡市が協力する九州大の研究の概要
静岡市が協力する九州大の研究の概要


 同大は厚生労働省の助成を得て、ある集団を追跡して病気の発症など健康状態の変化を調べる「コホート」と呼ばれる研究を実施する。市と同大は24日、研究に関する覚書を締結した。研究には現在、全国の約30の自治体が協力し、県内では静岡市が初めてとなる。
 市が提供するデータは全市民の住民基本台帳や居住地域などの情報のほか、健診結果や予防接種台帳、医療機関のレセプト(診療報酬明細書)など。市は各種データの突き合わせと個人情報の削除を行い、個人が特定できない形式にして同大に提供する。同大は情報をデータベース化し、「疫学」「新生児・小児」「認知症」などの分野ごとに20年にわたって追跡評価しデータを解析する。
 解析により、ワクチンの安全性の検証や所得水準が健康格差に及ぼす影響の評価、歩数・行動範囲と認知症発症の関連性など、健康増進に向けた学術的なエビデンス(根拠)を得ることができるという。
 市は同大からデータの解析結果を健康増進施策の立案に生かす。他自治体に比べて患者数が多い糖尿病について、地域性や発症の要因を市独自に詳細分析することも検討する。必要以上に多くの医療機関にかかっている人や頻繁に治療を受けている人の地域性などの特性も把握できれば、医療費適正化につながることも期待できるという。
 市民情報の第三者への提供は、これまでは個人情報保護法によって制限されていたが、2021年の法改正で、学術研究目的での研究機関への提供が可能になった。
 (政治部・池谷遥子)

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