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四ツ池 陸上の“聖地”に 浜松市の再整備方針、前進へ 球場機能は他で維持  

 浜松市が7月の市議会特別委員会で打ち出した四ツ池公園運動施設(中区)の再整備方針は、浜松球場を解体し、陸上競技場に特化する案が了承され、施設が陸上競技の“聖地”として新たに生まれ変わる公算が大きくなった。市は本年度9月補正予算案に同施設再整備の調査費約3千万円を盛り込み、事業を前へと進める方針だ。同施設を巡っては陸上と野球の両競技団体がそれぞれ、専用施設としての活用や存続を市に要望してきた経緯がある。陸上関係者は競技の活性化や競技力の向上を期待する一方、野球関係者からは惜しむ声が漏れる。

四ツ池公園運動施設内の陸上競技場。浜松市は同施設の野球場を解体し、陸上競技場に特化させる再整備案を示している=7月下旬、浜松市中区の四ツ池公園運動施設
四ツ池公園運動施設内の陸上競技場。浜松市は同施設の野球場を解体し、陸上競技場に特化させる再整備案を示している=7月下旬、浜松市中区の四ツ池公園運動施設


 再整備する陸上競技場はメイントラックが国際大会を誘致可能な公認第1種か、全国大会が開催できる現在と同じ公認第2種の規模となる。市民アスリートの練習の場としてサブトラックも併設する計画だ。
 陸上競技専用施設としての再整備を求める要望書を提出した静岡西部陸上競技協会の山口嘉一会長(76)は「大変ありがたい。トップアスリートを間近で見ることは子供の刺激になる。国際都市・浜松をアピールできる施設に」と公認第1種の実現を切望する。
 市内の陸上競技場はほかになく、老朽化に加え、駐車場や選手の待機場所の不足など課題も多かった。市陸上競技協会の鳥井啓市会長(72)は「交通の便もいい場所なので、新施設はにぎわい創出にもつながるのでは」と期待を寄せる。
 一方、市は「野球場から一切、手を引くわけではない」とし、浜松球場の機能維持を見据える。プロ野球の試合は、西区の遠州灘海浜公園篠原地区に県が整備する新野球場で担い、高校野球県大会は、浜北など市内他球場の改修などによって確保する方針を示す。
 新野球場を巡ってはドーム型や照明設備のない屋外球場など、規模やタイプは今後、議論が深まる見通し。県は2024年2月に基本計画素案を策定し、同6月に計画を公表するスケジュールを目指している。
 県の野球場整備後も浜松球場を存続するよう求めてきたNPO法人県野球協議会の川島勝司会長(80)は、浜松球場の解体方針について「ただでさえ県西部は野球場が少ない。愛着のある球場だけに残念だ」と嘆き、「今後の推移を見守っていきたい」と語った。
 公式戦で浜松球場を使用した経験のある市内の高校球児は「浜松球場は自転車で来られる距離なので多くの在校生が応援に来てくれて力になった。他球場は行くのも大変だし、応援に来る人も減ってしまうのでは」と不安をのぞかせた。
 市は今後、具体的検討に入り、24年9月ごろに同施設の再整備構想を確定する。中野祐介市長は「スポーツや文化を通じ、市民の暮らしを向上させる。(同施設は)市民が競技を楽しむとともに、まちの魅力を高める施設にしたい」と意欲を示す。
 (浜松総局・宮崎浩一)

 <四ツ池公園運動施設の再整備を巡る議論> 浜松市や市議会特別委員会は2016年度の現況調査をきっかけに具体的議論を開始したが、県が西区の遠州灘海浜公園篠原地区に整備する野球場の規模などを見極める必要があるとして、2年以上にわたって議論は止まっていた。市は老朽化が深刻なことから、県の野球場の議論と切り離して検討を進めることを決断し、再整備方針案を提示した。建設から40年以上が経過している陸上競技場と浜松球場を時代に合った規模で改修した場合、専有面積の拡大は避けられず、市は「併設は困難」としている。

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